KENJA GLOBAL(賢者グローバル)

ツボサン株式会社
梶山 美里

製造業の社会的地位向上を目指して

1928年設立以来、ヤスリ製造で国内トップシェアを誇るツボサン。2023年に社長である父親に直談判し、社長になった賢者。そこに至るまでの彼女の葛藤や、家業への思い、思い描く未来について聞いた。

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PROFILE

賢者プロフィール

氏名 梶山 美里
会社名 ツボサン株式会社
出身地 広島県
出生年 1991年
こだわり 息してるだけで偉い。人生長期戦なので肩の力を抜く
趣味 温泉、サウナ、ランニング、自転車でリフレッシュ
特技 朝令暮改
休日の過ごし方 スーパー銭湯で家族とまったり
座右の銘 克己、実るほど頭を垂れる稲穂かな
好きな食べ物 シャインマスカット、寿司、焼肉、にんにくラーメン
尊敬できる人 渋沢栄一、松下幸之助

HISTORY

賢者ヒストリー

  • 幼少期~学生時代

    幼いころは、父が土日に会社へ行く際について行き、会議室で宿題をしながら過ごしていました。出勤していた社員の方々に声をかけてもらい、時には遊んでもらうこともあり、会社は温かくて楽しい場所という印象が自然と根づきました。父の海外出張にもたびたび同行し、さまざまな国や人に触れる中で「人とのつながりって面白い」と思うように。でも実は、当時の私はかなりの人見知りで、初対面の人と話す際は目も合わせられないほどシャイでした。そんな自分を変えたくて、大学時代にはスナックのアルバイトに飛び込みました。人生で一番実践的な「話し方講座」だったと思います。気づけば誰とでも物おじせずに話せるようになり、人と向き合うことに自然体でいられるようになりました。

  • 社会人時代

    明確に「家業を継ぐ」と決めていたわけではありませんが、どこかでその可能性は念頭にありました。まずは経営の土台となる財務を学びたいと思い、新卒で厳しさに定評のあるIT企業に入社。スピード感ある現場で実践力を鍛えながら、経営の中枢である財務部での経験を積みました。その後、自分の可能性を広げたいと考え、自ら貯めたお金でオーストラリアへ語学留学。受験勉強で文法や読解はある程度できたものの、会話には自信がなく、またしても「苦手克服のために現場に飛び込む」という選択をしました。帰国後にツボサンへ入社し、会社をよりよくしたい一心で改善提案を重ねましたが、実の父である社長に否定されることも多く、自信を失い、最終的には適応障害に。しばらく引きこもりながらも、もう一度経営を学び直そうと決意し、MBAの学校に通い始めました。

  • 社長就任のきっかけとその当時

    MBAで学ぶ中、自社について深掘りする機会が増え、仲間や先生から「面白い会社だね」と興味を持ってもらえることが素直に嬉しく感じるようになりました。そんなある日、製造業の将来性を否定するような言葉を耳にしたとき、自分でも驚くほど悔しさが湧き上がり、「ああ、自分はこの家業に誇りを持っていたんだ」と気づいたのです。私の体の95%はヤスリ製造の利益でできている。そう思うと、今ここで家業を手放すわけにはいかないと強く思いました。そこから社長になる決意を固め、父に直談判。MBAの恩師の紹介で出会った経営者の方々「援護射撃」として同席いただき、手紙を読み上げて思いを伝えました。空気づくりも計算し、なんとか承諾を得て、2023年4月に代表取締役に就任しました。

  • 現在の事業

    社長に就任してからは、理想と現実のギャップに悩むことも多く、課題は山積です。それでも、これだけは揺るぎません。いわゆる「3K」と呼ばれる現場で働く人たちに、もっと光を当てたい。社会を支えているのは、実際に手を動かし、泥臭く働いてくれている人たちです。東京のオフィスだけで経済は回りません。製造業の社会的地位が向上し、「やりたい」と思う人が持続的に現れなければ、経済全体が立ち行かなくなると感じています。農業、工業、物流、町工場──そうした現場を担う人たちが、誇りを持ち、正当に評価される社会をつくりたい。そして、子どもたちが「かっこいい」「自分もああなりたい」と憧れるような仕事にしていきたい。それが、今の私のいちばんの願いです。

  • 今後の展望

    幼いころから父や祖父とともにツボサンを支えてくださったベテラン社員の皆さん。その雇用を守りたいという思いが、私の根底にはあります。ただし、そのためには私たち自身が変わり続けなければなりません。現状維持では生き残れない──そうした危機感のもと、私は毎日「何か打てる手はないか?」と考え続けています。だからこそ今、従業員の皆さんのお力をお借りしたい。ツボサンの行動指針である「尊和」「挑戦心」「Enjoy Tsubosan」をそれぞれが実践しながら、会社としても「Learn well, play well」の精神で前向きに変化を楽しめる組織にしていきたいと思っています。変化はチャンス。挑戦を、楽しもう──その姿勢こそが、次の100年をつくる礎だと信じています。

  • 若者へのメッセージ

    自分の手でつくったものが誰かの役に立ち、その場で「ありがとう」と言ってもらえる。そんな「手触り感」のある仕事こそ、ものづくりの醍醐味だと思います。完成したときの達成感や、人の笑顔に触れたときの喜びが、次の挑戦への大きな原動力になります。たしかに、製造業の現場は華やかではないかもしれません。でも、誇りを持って働ける場所であり、人生をかけて取り組むに値する仕事です。これからの日本を背負う皆さんには、ぜひこうした業界にも目を向けてほしい。そして一緒に、ものづくりの価値を高め、未来へとつなげていけたら嬉しいです。私たちが待っているのは、「つくること」で誰かを幸せにしたいという、その気持ちです。

COMPANY

会社概要

企業名 ツボサン株式会社
所在地 広島県呉市仁方桟橋通1511-26
業種 製造
設立 1928年
資本金 7,800万円
従業員 86名
事業内容 ヤスリ製造、販売
URL https://tsubosan.co.jp/
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